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あり得ない神の民の仕事

By Greg Forster, https://greenroomblog.org/tag/babel-series/より。このブログは、著者よりLIGHT PROJECTに翻訳と配信の許可を得ています。

つぶやき(バベル)続けるシリーズ:3


創世記11章を抜きにして、創世記12章を理解することはできません。残念ながら、聖書の贖いの物語は、聖書のバベルの物語から切り離されてしまっています。 このことを示す明確な兆候は、多くの場合、創世記12章(贖いの物語の基礎となる箇所)を読むとき、その前に創世記11章(バベルの物語の基礎となる箇所)を必要不可欠な文脈としないで読むという事実にありありと表れています。

そしてこのことは、私たちの仕事の神学に大きな影響を与えます。これまで見てきたように、バベルの物語は、仕事の持つ大きな誘惑と力について書かれています。

注意:創世記11章と12章の繋がりは文学的なものであり、時間的なものではありません。バベルの災いから偉大な再生プロジェクトの創始者がウルを出て行くまでに、おそらく相当な時間が経過していると思われます。古代近東の文学では、作者は物語間の重要な繋がりを、時間的な近接性(あるいは順序)をあまり気にせずに、書面上に並列することによって示していました。創世記12章が創世記11章の直後にあることは、時間的にウルがバベルの直後にあったことを意味するのではなく、論理的帰結としてウルがバベルの後にあったことを意味するのです。

創世記12章では、神はアブラムを新しい国の創始者として召されます。この国は、神との間に独自の贖いの契約関係を持つことになるのです。しかし、この国はまた、世界のすべての国々を祝福するという使命に遣わされます。国々に対する神の関心は、この国に対するだけではなく、すべての国々に対する関心であり、神の救いの使命をすべての国にもたらすために、一国を選ぶことを通して表現されたのです。

創世記11章の文脈を抜きにして考えると、イスラエルの国家共同体とイスラエルの贖いの使命の間の繋がりを見落としてしまいます。バベルの後、社会生活がこのように組織されているため、神は国々と共に働かれているわけです。

国家共同体は、仕事のための重要な文脈です。仕事は協力的であり、主に公的な共同体の中で行われます。創世記11章にあるバベルの物語は、これを強調しています。

神の民として忠実かつ完全になるためには、私たちは神の方法で働かなければなりません。この召しは、どのような状況下でも個人的に遂行することができます。教会から孤立して異教徒の主人のために働いているローマの奴隷は、キリストに仕えているのだと、私たちは聞かされています。しかし、神の使命は、神に従う者が個々に忠実であることだけでは、十分ではありません。神はまた、ご自分のために、状況が許す限り、共に働いて神の道を歩む民を造られるのです。こういうわけで、創世記11章から使徒2章に至るまで、契約の民、つまり神の道を歩むために献身する国家共同体が明らかに必要であったわけです。

私たちの傾向として、イスラエル国家を軽視するか、救いの使命から切り離すかのどちらかの態度をとりがちです。ローマ・カトリックやプロテスタントの伝統は、イスラエルを教会の前身としてとらえ、国家としてのイスラエル、すなわち公的共同体としてのイスラエル、ひいては人々の働きのための主要な社会空間としてのイスラエルの地位を軽視しがちなのです。これに対し、ディスペンセーション神学は、イスラエルの国家としての地位を強調しますが、イスラエルの生活のこの側面を、今日私たちが参加している大きな救いの歴史から切り離す傾向があります。

この点については、最近、クリス・ライト師の『神の民のための旧約聖書倫理学』などで、神学的な修正作業が行われています。このような修正的な傾向が信仰と仕事の統合の動きの中で注目されているのは、神の救いの計画を理解する上で、イスラエルの経済的慣習が中心的な重要性を持っていることを回復してくれるからです。もちろん、今日、旧約聖書の経済法則を押し付けるわけではありませんが、神がイスラエルで贖い的に行われたことが、ある種の社会組織を生み出したことを理解し、その種の社会組織の現代版(再文脈化)を、今日、育成する努力をしたいものです。

しかし、贖いの物語をバベルの物語の文脈に戻さない限り、この是正は不完全なものとなってしまいます。神は「世界が堕落したから」特別な国家を創られたのではありません。まず、バベルで「国々」を創られ、次にウル以降、ご自身の国とその中に生きる民を創られたのです。

聖書を通して、バベル/バビロンは堕落した世界における人間の社会組織の代表的なシンボルとして存在しています。この対極にある神の民を理解することは、神の民が誰であり、何をすべきなのかを理解するのに不可欠です。イスラエル、そして教会は、バベル/バビロンを支持するため、またバベル/バビロンに反対するための両方に立てられているのです。私たちが堕落した隣人を愛し、彼らの繁栄のために働く使命を持っているという点で友好的です。また、それに反して、あるレベルでは、私たちを取り巻く世界の多くのことに反対して、使命に忠実に、社会を再編成しなければならない(実際には、経済的に再編成することも意味しますが…)という点で、敵対的であるわけです。

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Greg Forster氏は、米国トリニティー国際大学のTransformational ChurchセンターにあるOikonomia Networkのディレクターです。Yale大学より博士号。著書多数。

LIGHT PROJECTでは、働くクリスチャンが、「信仰と仕事」を統合して、毎日の仕事を通して、職場でイエスの光(Light)を輝かせることができるように励まし、養うことを目標としています。

このブログを通しても、皆さんの励ましと役に立てれば嬉しいです。

翻訳:後藤スティーブン

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